親からのストレスを感じて悩んでいる大学受験生へ、予備校講師がケース別の対処法を教えます。
大学受験は、高校受験とは比較にならないほどストレスを感じる試験です。
幼稚園・小学校・中学校と受験慣れしてきた歴戦の受験生は別として、多くの人にとって全国レベルでの受験は初めての経験です。
そんな時、自分を励ましてくれる味方は一人でも欲しいもの。
私が予備校講師をしていた際も、受験生からは「親との関係が一番困る」「親がしてくることがストレスでたまらない」などの相談を受けることがしばしばありました。
相談内容は多岐に渡っているので、今回はケース別に「親に対してどのように接したらいいのか」について予備校講師の目線でアドバイスします。
1.親からの過干渉
(1)親が心配しすぎて口を出しすぎてくる場合
学生からの悩みを聞いていると、特に女子学生からこの悩みを聞くことが多いです。
朝起きてから家を出るまでずっと、あれやこれやと学生に予定を聞いてきたり、帰宅時間についてしつこく念押ししたりします。
また、帰宅後も口を開けば「大丈夫なの?」とか、「勉強しなくていいの?」など、根掘り葉掘りと聞いては干渉してくるケースがあります。
このような心配性の親に接する場合は、自分の行動を毎日説明するよりも、1週間単位の行動予定を大まかに伝え、信用して任せてくれるように交渉しましょう。
親が心配する理由は、「子供が受験までの時間を無駄にしているのではないか」と懸念しているからというのが大きいです。
信用してもらうためには、自分で計画し行動できるところを見せて懸念を払拭する必要があります。
(2)志望校の決定に親が介入してくる
本来、志望校は受験生本人の意思によって決定するものです。
とはいっても、学費を出してくれるスポンサーである親の意向を無視することは出来ません。
親は自分の経験から、子供たちに同じ失敗をしてほしくないと思っています。
そのため、自分の人生経験から最善と思われる道を子供たちに示そうとするのです。
しかし、「親の最善が子の最善である」とは限りません。
自分自身で目標をしっかり立て、親から見ても「志望校は本人に任せて大丈夫だ」と思えるような提案をするべきでしょう。
志望校選びに失敗しても誰も責任は取ってくれませんから、あくまで進学先は自分の希望を叶えるべきです。
【参考】大学の選び方が分からない?大学選択の5つの基本を教えます
(3)親と考えが合わない、親の考えが古くてついていけない
時代によって、世代によって、大学受験や将来に対する考え方は異なって当たり前です。
親の世代で当たり前だったことが、現在でも当たり前とは限りません。
例えば、かつては大企業の正社員は終身雇用が当たり前でしたが、今では大企業もいつリストラするかわからない時代です。
時代の常識は常に変化するのです。
しかし、親の言うことがすべて古臭くて間違えているかといえば必ずしもそうではありません。
時代を越えた真実もあるのです。
非正規労働者なら、雇用や保険が不安定になりがちです。
正社員になることで将来設計を安定させることは、現在でも十分通用することなのです。
このような世代間のギャップは、お互いにコミュニケーションをとることでしか解消できません。
少しでも多くの時間を勉強に使いたいという気持ちは理解できますが、親や周囲の人たちとの会話時間をとることでお互いの意思疎通を図ることは、受験において重要であることを忘れないでください。
2.親の無関心・無配慮
(1)受験生なのに、自分の相談に親がのってくれない
たくさんの情報が出回っている現在、どの情報が信用に値するか、自分の道をどのように進むべきか、情報が多いゆえの迷いもあるでしょう。
そんな時にアドバイスしてくれる最も身近な存在が親です。
ところが、親がなかなか相談に乗ってくれなかったり、親身になってくれないことで孤独感やストレスを感じるケースがあります。
そんな時にするべきことは、主に以下の2つです。
一つは、「親がアドバイスしやすいよう、最近の受験について会話をする」ことです。
学校や予備校の進路説明会の資料を一緒に見ることも大事ですね。
ただ単に「かまって!」というだけでは、親は受験に関心を持つことができません。
しっかりと情報共有をすることで、ようやっと、親にとっても子供の受験が「自分事」になるのです。
もう一つは、「自分なりの考えを持つ」ことです。
何も考えず、あたかも親に丸投げするごとく「どうすればいい?」などといわれても、返答に困ります。
つまり、
「今の受験状況はこうこうで、自分の考えはこうだ。迷っているのはこの点だ。」
と相談内容が具体的になればなるほど、関心を持ちやすく、有効なアドバイスを得られる可能性が高まるでしょう。
仮に、それでも関心を持ってもらえなかったとしても、状況報告はしたことになるので、自分の志望校決定の際に親が反対する確率を下げる効果は期待できるでしょう。
(2)受験生なのに、親が食事やイベントに連れまわそうとする
まず、親がどのような気持ちであなたを外に連れ出そうとしているか考えてみましょう。
もし、親があなたのことを思ってストレス発散や気分転換に良いと思って誘っているならば、最初に、親の気持ちに感謝しましょう。
そのうえで、自分が外出できない理由について丁寧に説明してあげましょう。
そうすることで、断られたとしても気持ちは伝わっていると思えるので、後味の悪い展開にはならずに済みます。
もし、親があなたの気持ちや状況を考えずに連れ出そうとしているなら、理由を言ったうえではっきりと断るか、短時間で切り上げなければいけない旨を伝えましょう。
一時的に関係が悪くなるかもしれませんが、自分の意見を伝えることも大事なことです。
ただし、あからさまな拒絶の態度を見せて相手の気分を害する断り方をするのは避けましょう。
親は、あなたにとって大事な受験のパートナーです。
決して粗略に扱ってはいけません。
3.お金の壁
家庭によっては、学費や生活費の面から志望校が制限されるケースがあるでしょう。
場合によっては頭ごなしに「お金がないから私立や地元以外の大学はダメ」といわれてストレスを感じることもあるでしょう。
もし、そのような状況になったら、いったん退いて体勢を立て直しましょう。
その間に、親の言う「経済的問題」を解決できる道を模索します。
私立大学などでは、「給費生」の制度を設けていて、学費を一定額あるいは全額免除してくれる場合があります。
また、生活費の面でも寮を利用したり、学生向けの下宿を利用することで親が考えている金額よりも安く大学に通えるかもしれません。
親が知らないようなことでも一生懸命調べて、提案する姿を見せることで親が頑張りを見せてくれるかもしれません。
実際、経済面での壁に突き当たった学生が自らより学費がかからない方法を提案することで、親が支援してくれるケースを何度となくみてきました。
相手にねだるだけではなく、自らも追い求める姿勢を示すことが、何より親を突き動かすのです。
【参考】大学の費用はどうしてる?大学進学のお金が不安な方へ14の提案
4.親の悩みを考えよう
さて、今まで学生から見た親がかけてくるストレスについてお話してきましたが、逆の立場に立ってみることも大事です。
親はいったい何に悩んでいるのでしょうか。
(1)親は受験期の子供とどう接していいか分からない
これは、私も多くの親御さんから実際に打ち明けられたことのある悩みです。
ピリピリしてすぐに八つ当たりしてくることもがあれば、スマホをぼんやりといじっていて「本当に大丈夫か?」と心配になることもあるようです。
そうなると、我慢できずについ「大丈夫?」「勉強しなくていいの?」などと口に出してしまうのです。
自分の行動が親に心配をかけていないか、振り返ることも必要でしょう。
(2)親は今の受験状況がわからない
皆さんにとって、センター試験の変化や各大学の二次試験・一般入試の情報は、いわば受験の常識。
「受験の仕組みや志望校の難易度について、親もある程度は知っていて当然だ」と思う方も多いでしょう。
しかし親からすれば、大学受験は分からないことだらけなのです。
学生の皆さんは、スポンサーである親にもっと受験についての情報を開示してあげましょう。
5.コミュニケーションが大切
今回は、親が学生に与えてくるストレスやプレッシャーについて考えてみました。
全体を通して言えるのは、親とのコミュニケーションが不可欠だということです。
高校3年生や予備校生は、特に親との会話を大事にしましょう。