AO入試の「専願」「併願」、これは受験の業界用語といってもいいほどメジャーな言葉です。
しかし、AO入試を受ける当の受験生は、あまり深くAO入試の専願・併願について理解していないことがあります。
私が以前勤めていた高校でも、指定校推薦で合格した学生が「どうしてもAO入試で合格した大学に行きたくない」と言い出して、学年中大騒ぎになった事がありました。
今回は、AO入試における出願の原則と併願について、高校教師・予備校講師の経験を活かして説明します。
1.専願・併願って何?
「専願」とは、「合格したら必ず入学する」との条件で出願できる入試形式のことです。
AO入試や指定校推薦入試は、専願が条件となっていることが多いです。
ですから、最初の例に出した学生の場合に大ごとになったのです。
結果を言えば、なんとかその生徒の合格辞退は認められたものの、学校の翌年の指定校枠は一つ減らされました。
つまり、後輩たちにとってはとても迷惑なわけです。
他の大学にも同時に出願する「併願」を認めるかどうかは、大学ごとのAO入試要項に書いてありますので必ず確認してください。
言い方を変えれば、「入学する覚悟がないなら専願に出願しないでください」と言ってもよいでしょう。
ちなみに、併願は文字通り「複数の大学を同時に受験すること」で、合格しても辞退することはできます。
2.専願のAO入試・推薦入試に一度出願したら、他の大学には出願できないの?
AOの結果が合格だった場合は、もちろんその大学に入学しなければなりません。
しかし、不合格だった場合は、別の大学に出願しても大丈夫です。
推薦入試を受けなおしてもよし、AO入試を受けなおしてもよし、あるいは一般試験に切り替えてもよしです。
専願は、あくまでも合格後に成り立つ話です。
専願で不合格なら、もう一度最初からやり直しになるだけのことです。
3.大学と専門学校のAO入試は併願はできるの?
専門学校であっても、大学であっても、AO入試でひとたび出した以上、結果が決まるまでほかの大学に出願できません。
もし複数の大学に出願して、どれか一つでも合格したら他の大学は辞退することです。
併願を認めている大学でない限り、要項に違反していたということです。
本人はともかく、学校や後輩たちに影響を与える可能性があるので、辞退や出願取り下げはできるだけ避けてください。
専門学校と大学では区分が違うから大丈夫と思っている人がいるかもしれませんが、「専願」である以上は、合格したらかならず入学するという約束をしているのと同じです。
どちらかに進学すれば、どちらかは辞退する、つまり要項に違反することになるので辞めましょう。
専門学校のAO入試|合格までの流れと注意点を解説します
4.そもそも、なぜAO入試が専願なのか
AO入試の本質から考えると、専願であることは当たり前だといえます。
それはいったいどうしてでしょうか。
AO入試は“自分から“「大学のアドミッション・ポリシーに適合している」と立候補する受験の形式です。
自分から入りたいと手をあげておいて、合格したら「やっぱり辞めた」。
これは信義にもとる行為ですよね。
出願した大学で、その学部で学びたいという強い気持ちがあって出願したはずですよね。
それならば、
ということになるのです。
「どうしようかな、合格しても行く気はそんなに無いけど、せっかくだし一応受けとこうかな」と迷うくらいであれば、受けない方がましです。
5.AO入試は覚悟が必要な入試
AO入試は、他の入試の形式と比べて選考期間が長く、「評価基準もあいまい」で精神的に厳しい試験です。
あるAO受験生は、
「一般入試のほうがはるかに楽。模擬試験で判定もわかるし、勉強したことが点数に反映される様子も見えやすい」
と嘆いていました。
その受験生の場合は、興味のある学部の入試区分がAO入試と高難易度の一般入試しかなかったため、必死にAO入試に打ち込んでいました。
また、落ちた時のために一般入試やセンター試験の学習を欠かすことはありませんでした。
万全の準備を整え、自分がやりたいことをやれる学部に向かってひたすら突き進む覚悟を持っていたからこそ、精神的にきつい面があるAO入試も乗り越えることができたのでしょう。(結果は、言うまでもなく合格でした)。
AO入試はそんな試験だからこそ、中途半端な気持ちや「とりあえず出しておこう」という気持ちで出願するべきではないと考えます。
まして、せっかく受かったのに辞退したり、他の大学と併願しようとしたりというのでは志望校決定にあたっての覚悟が足りないといわざるを得ません。
目標がはっきりしていなくてなかなか志望校を絞り切れないという場合は、AO入試をそもそも受けず、ひたすら学力点を向上させることに注力し、進路の選択肢を増やすという受験スタイルが望ましいです。
面接や小論文、特に面接では自分の気持ちを乗せて相手に訴えなければなりません。
併願したり辞退したりする「逃げ」の姿勢があれば、選考過程で面接官に伝わってしまい、そもそも合格できる可能性が低くなるでしょう。
まとめ
・AO入試や指定校入試は専願なので、基本的に合格したら辞退できません。
・無理やり辞退すれば、さまざまな悪影響が出る可能性があります。
・中には併願を認めている大学もあるので、募集要項は隅々まで熟読すること。
・辞退や併願を考えているときは面接官に見破られることが多いですよ。