大学受験の話をするとき、必ずと言ってもよいくらい登場する言葉が偏差値です。
早速ですが、あなたはなんとなくこのように考えていませんか?
● 偏差値が高い ⇒ 良い大学
● 偏差値が低い ⇒ ダメな大学
そもそも偏差値は単なる指標であり、実力を測るモノサシの一つにすぎません。
では、どうして受験において偏差値が重視されるのでしょう。
今回は「偏差値とはそもそも何なのか」について、そして「偏差値はどのように役立てるべきなのか」について予備校講師の経験を活かしてアドバイスします。
偏差値にとらわれて落ち込むのはやめましょう。
元予備校講師の営業マンです。
高校の非常勤講師、学習塾・予備校の講師の経験を活かして大学受験に関する記事を執筆しています。
学力偏差値とは何か
学力偏差値とは、自分の成績が「集団の平均からどの程度離れているか」を示す数値です。
「自分の点数は受験生全体で見たときにどれぐらいの位置にいるのか」が分かるのが偏差値なのです。
そして、前提としてその集団の平均点が偏差値50と対応します。
例えば、平均点が60点の試験の場合は60点が偏差値50に対応します。
この場合、あなたの点数が60点以上であれば、あなたの偏差値は50以上になります。
逆にあなたの60点以下であれば、あなたの偏差値は50以下になります。
そして、「平均点60点のときに70点を取る」よりも「平均点40点のときに70点を取る」ほうが偏差値は高くなります。
「平均点=偏差値50」のイメージですね。
学力偏差値の計算方法
入試における学力偏差値の計算方法は以下の数式で計算されます。
「標準偏差」は、簡単に言うと「データのばらつき具合」を表しています。
ここでは標準偏差の求め方については詳しく触れませんが、イメージとしてはこのような感じです。
● みんな似たり寄ったりの点数だ!⇒ ばらつきが小さい
● 点数が高い人と低い人の差が大きい!⇒ ばらつきが大きい
つまり、自分の偏差値を正確に求めるためには、自分と同じテストを受けた受験生たちの点数の情報が必要なのです。
学内テストの偏差値の方が、全国模試の偏差値よりも低く出やすい場合、あなたの学校の学生たちの学力レベルは高いと考えられます。
もっと簡単に学力偏差値を計算する方法
標準偏差って何?よくわからない!
ってなりますよね。
そんな時は、以下の数式を使ってみましょう。
正確な偏差値を求めることは出来ませんが、偏差値に近い数字を簡易的に求めることが出来ます。
偏差値から自分の順位を予想するには
通常、学力偏差値が分かっただけでは自分の順位を正確に割り出すことはできません。
しかし、試験の成績が正規分布だと仮定することで、自分の順位にだいたいの目星をつけることは可能です。
早い話、こちらの「偏差値から自分がだいたい上位約何%の成績なのか分かる変換表」を参考にすれば、偏差値から自分のだいたいの順位を把握することができます。
偏差値 | 上位約何%か |
80 | 0.1% |
75 | 0.6% |
70 | 2% |
65 | 7% |
60 | 16% |
55 | 31% |
50 | 50% |
45 | 69% |
40 | 84% |
35 | 93% |
30 | 98% |
※あくまで試験成績が正規分布であると仮定した場合の変換表です。
偏差値はあくまで実力の”目安”
偏差値は「その集団内での自分のだいたいの位置を知ることが出来るだけ」です。
上の表は試験の成績が正規分布であることを仮定していますから、自分が正確に上位何%なのかは分かりません。
模試によっては詳細に「順位」まで出ますが、順位が分かったとしても入試に向けて気にしすぎる必要はありません。
本番の入試では、多くの受験生たちが模試から志望校を変えている可能性がありますし、当たり前ですが実力も変動します。
自分は志望校の偏差値に5足りないから受からないだろう。
なんて考えるのはナンセンスです。
偏差値は、あくまで「同じテストを受けた集団の中での、自分のだいたいの位置(実力)を知ることが出来るに過ぎない」ということを忘れないで下さい。
Q&A1:偏差値の平均(普通)はどのくらい?
冒頭にも書きましたが、集団の平均点が偏差値50と対応します。
つまり、偏差値の平均は50なのです。
試験の結果を見たときにあなたの偏差値が50より低ければ、その試験では「自分の点数が平均点に達していなかった」ということが分かります。
そして、自分の偏差値が50からどれくらい離れているかによって、「平均点からどれくらい離れていたか」ということも分かります。
Q&A2:偏差値の最高は100なの?
偏差値の最高は100ではありません。
100より上の偏差値が出ることもあり得ます。
具体的には、100人が同じテストを受けて99人が0点を取り、残りの1人が100点を取れば、100点の学生の偏差値は約150になります。
偏差値の高い大学を選ぶメリット
(1)意識が高い学生が多い
偏差値が高いということは、一般的に入試の難易度が高いということであり、相応の勉強の努力をしなければ入学が難しいということです。
偏差値が高い学校ほど、合格のために目標と計画を立てて継続的に勉強する必要がありますから、それを突破した、いわゆる「優秀な方・意識が高い方」が多くなります。
周りに優秀な人がいる環境に身を置けば、自然と自分も努力することが当たり前になるでしょう。
環境が人を育てるというのは否めません。
(2)質の高い授業を受けることができる
大学が入試をする理由の一つは、大学での授業についていける学生を選抜する必要があるからです。
入試難易度が高ければ高いほど、より高度な授業を展開することもできます。
大学の本来の役割は専門的な研究をすることです。
学生の学力レベルが基準に達していない場合、研究に入る前の基礎を教える時間が長くなりますから、なるべく早く高度な研究を行うためには学生のレベルが高いに越したことはありません。
(3)就職に有利になりがち
日本の企業、特に大手の企業は新卒一括採用を実施しています。
一括採用となれば、たくさんの人を審査しなければなりません。
一人一人をしっかり見ていく時間が足りないのです。
そこで使う便利な「モノサシ」が偏差値です。
偏差値が高い大学(多くの場合は有名大学)の学生を企業側が採用したがる理由は、ブランド物の製品を買うのに似た側面があります。
バッグ一つ買うのでも、ノーブランドよりも有名ブランドの方がありがたがられるのは、有名ブランドの方が「安心感がある」からです。
よくよく品物を精査してみれば、ノーブランドとブランド物で品質に差がない製品もあるかもしれませんが、そこまで精査するのは大変です。
「とりあえず有名大学の学生を取っておけば安心だ」という心理が採用担当者たちに働くのは否めないところでしょう。
(ただし、各企業は「有名大学の学生を優遇している」ことは公式には認めていないので、あくまでも世間的な憶測だということは忘れないでください。)
偏差値が低い=就職に不利とは言えない
偏差値が低い大学が就職面で不利かというと、必ずしもそうではありません。
偏差値が50前後の大学でも良い就職先につけると評判の大学もあります。
その代表が金沢工業大学です。
就職内定率は99.9%。受験業界でも隠れた優良大学として認識されています。
自営業を差し引いても97.7%で他の追随を許さず、上場企業や大手企業、公務員などへの就職も63.4%を占めます。
金沢工業大学は徹底的に就職活動に力を入れることで、入学段階では全国平均かそれ以下の学生を鍛え上げます。
本人のやる気があれば就職の面倒をしっかり見てくれます。
大学の専門と直結している技術職であれば、金沢工業大学は強みを最大限に生かすことができるでしょう。
なんだか金沢工業大学の回し者のような書き方になってしまいましたが、このように入試の偏差値に比べて有名企業から内定をもらいやすい大学・学部は探せばたくさんあります。
偏差値に固執するのでは無く、自分に合った大学を探しましょう。
さいごに
最後に、偏差値の高い大学にこだわったとある学生のお話をして終わりにしましょう。
その学生は明治大学などのGMARCH(学習院・明治・青山学院・立教・中央・法政)以上の大学進学を目指していました。
大学のブランドを手に入れたいと考えていたからです。
ところが、成績面で難があり、かなり厳しい状況に追い込まれていました。
そんな中、彼から志望校変更の話が出ます。
彼は法学系を目指していましたが、突如、明治大学の農学部を受けたいと伝えてきたのです。
どうやら、過去の模試で最も判定がよかった農学部にすることで、何としてでも明治大学に行きたいということでした。
彼からすれば、偏差値の高い大学に入学できればそれでよかったのだと思います。
何度か彼に念を押したうえで、保護者の方ともお話し、農学部に進路変更。
最終的には合格しました。
ですが、この件で疑問を感じざるを得なかったことがあります。
それは、何のために大学に行くのかです。
就職だけを目的とするなら、金沢工業大学の例を出すまでもなく、就職に有利な大学や偏差値の高い大学を選ぶのは理解できます。
ですが、大学は就職訓練の場ではなく研究するための場所です。
「自分が興味のない分野に進んで4年間を過ごすことに、本当に後悔はないのだろうか?」と考えてしまうのです。
勉強したいこと、研究したいことがあればそちらを優先するべきだと思うのです。
しかし、大学に行く目的が人それぞれ異なるのは事実です。
よく考えて、参考として偏差値を使うことをおすすめします。