高校を卒業し、浪人生として今までとは全く別の環境である予備校に入学。
地元の友人たちと離れ、一人きりの予備校生活を始める生徒も中にはいるでしょう。
そして、「予備校で親しい友達がいないことは受験勉強に影響するのか」と不安になっている生徒もたくさんいると思います。
そこで今回は、「予備校生にとっての友達」と「予備校での人間関係」について予備校講師の経験からお話します。
1.以前からの友達と同じ予備校に通っている場合
学習塾の講習会などに参加するとき、一人で講習会に参加するのが心細くて同じ境遇の友達と一緒に参加したことはありませんか?
予備校の説明会にも、同じように友達同士で参加する学生さんはたくさんいます。
その場合、1グループでまとまって同じ予備校に入ることが多いです。
見慣れた仲間たちと一緒に同じ環境で再スタートを切るのは心強いでしょう。
しかし、気がしれた友達と一緒に予備校に入校する場合、環境変化が少ないがために「ぬるい環境」に陥りやすいので、勉強に集中するために一層気をつける必要があります。
あまりに横並びの心地よさに浸ってしまうと、現役時代と同じく緊張感に乏しいまま1年を過ごしてしまう危険があるのです。
予備校入校以前からの友達が同じ校内にいるのであれば、あくまでライバルとして、お互いに受験勉強に力を入れられるように身を引き締めましょう。
2.予備校で友達を作る場合
いくら予備校といっても、四六時中勉強しているわけではありません。
昼食時間などで席が近かったりすれば、「話をするようになって気がつけば友達になっていた」ということはよくあります。
予備校によっては、高校のように球技大会や各種のレクリエーションを実施しているところもあります。
そういった機会に友達を増やす生徒は多いです。
一緒に受験勉強を頑張る仲間ができることで、予備校に通うことが苦にならなくなり、むしろ楽しみになっている生徒さんもたくさんいます。
人間関係が良好だと、気落ち良く予備校に通えますよね。
ただ、この場合も「ぬるま湯で緩む」という可能性に触れないわけにはいきません。
友達がいるということは、それだけお互いに影響しあうということです。
勉強に集中するべき時にカラオケやゲームに熱中してしまうことになれば、合格はおぼつきません。
実際、このような生徒も多いです。
成績が伸びなかったときに互いに相手のせいにし合うようなことは無いにせよ、あとあと「あの時、おしゃべりせずに勉強するべきだった」と後悔しても後の祭りです。
友達との関係は大事なものですが、「そもそもなぜ予備校に来たのか」と常に目的意識を再確認することを心がけましょう。
3.予備校で友達ができない場合
高校時代まではクラスに仲間がいて普通に過ごしていたのが、環境が変わってしまったせいで今までのように話す相手がいなくなってしまった。
友達を作るきっかけが見い出せずに、結果的に一人ぼっちになってしまった。
そういう学生さんも予備校内に確かにいます。
毎日予備校に行っても、「話す相手がいなくて一日中口を開くことなく終わった」という生徒もいます。
このような場合、無理して友達を作る必要はないと私は思います。
なぜなら、予備校に通う目的の第一は志望校合格のためであって、友達作りではないからです。
しかし、孤独なせいで予備校に通うモチベーションが保てなくなってしまうこともあります。
一人ぼっちが寂しいという方は、イベントや授業と授業の合間にほんの少しだけ周囲の人に話しかけてみましょう。
はじめは片言のような会話であっても、共通の話題や志望校などのワードが出れば話が弾むかもしれません。
孤独感が苦手な方は、自分からアプローチしてもよいでしょう。
4.あえて友達を作らず、一人で受験勉強に集中する場合
ここで、私が実際に出会った「集中するために、あえて一人で勉強していた予備校生」を2人紹介します。
まずは、一人目の女子生徒の話です。
私が予備校で教えていた当時、地元の出身で予備校内に友達がたくさんいてもおかしくない女の子がいました。
その子は、予備校に来る途中では友人たちと話をしているのですが、予備校に入ると周囲と話そうとしません。
とにかく、予備校にいる時間の全てをストイックに勉強に当てていました。
その甲斐あってか、秋の模擬試験ではA判定を連発するようになり、当たり前のように第一志望校も合格しました。
合格後に、どうしてそんなに勉強に取り組むことができたのかと彼女に尋ねてみました。
すると、
「私は、どうしても高校の教師になってバドミントンを教えたい。
そのために、第一志望校で教員免許を取得したい。
だから、今年一年は全てを勉強に当てました。」
と答えてくれました。
彼女は、予備校の中で友人同士の会話に熱中してしまうことで勉強に集中できなくなることを恐れたのでしょう。
自分の性格をしっかり把握しているからこそ、あえてハッキリとした区切りを作っていたということですね。
なかなか、半端な覚悟で成し遂げられることではありません。
もう一人紹介しましょう。
こちらも女子生徒です。
4月から6月にかけて、彼女は高校時代から付き合いのあった彼氏とつねにべったりくっついて授業を受けていました。
どこへ行くにも彼氏と一緒。
「勉強は大丈夫かなぁ」と見ていて心配になりました。
ところが、7月に入るとその行動がピタリと止んだんです。
進路面談の際、思い切って彼女に聞いてみました。
「最近、一人でいることが多いようだけど、何か困ったことはない?」
すると彼女は、
「私は、最近まで自分のやりたいことが何なのか、よくわかっていませんでした。
でも志望校を考えながら、どうしても養護学校の先生になりたいと思うようになりました。」
と答えてくれました。
彼女が志望していた学科は倍率が高い狭き門。
自分のゴールをしっかり把握したことで、「今のままではいけない」と思ったそうです。
彼女の覚悟も凄いもので、面談の最後に「私は、合格するまですべてを捨てる覚悟で勉強します」と宣言されました。
実際、彼女はその宣言を守って見事に第一志望校に合格しました。
このように、あえて予備校内で友達とつるまないことで勉強に集中できる環境を作ることもできます。
5.結局、友達は受験勉強に必要なの?
予備校で友達は必要かといえば、居てもいなくても大丈夫だといえます。
大事なことは、友達がいるかどうかより、どうして予備校で勉強しているのかということを肝に銘じて1年間頑張りぬくことができるかどうかです。
今現在、予備校で親しい友達がいないからと心配になっている方は、心配せずに自分のペースで受験勉強を頑張ってください。