「専門学校に行く意味はあるの?どうせ進学するなら大学でいいじゃん。」
と考えている方は多いですが、専門学校と大学はそもそも教育目的が異なります。
「専門学校は就職準備のために行くところ」
「大学は学問を学ぶために行くところ」
また、工業高校や農業高校、商業高校に通っていて、「専門学校なんて無駄。すぐに就職すればいいでしょ。」と考えている学生も多いです。
専門学校についての情報は大学と比べて調べにくく、専門学校の実態を知らない方は多いのが現実です。
そこで今回は、専門学校に行く意味や専門学校の魅力について、専門学校と大学の両方で講師として働いている私の立場から説明したいと思います。
専門学校の3つのメリット
講師たちがその道のプロ
専門学校の講師たちは先生というよりその道のプロであって、自分で事業を興している人もいますし、現役のクリエイターだったりします。
これはとても大きな魅力です。
専門的なスキルを教えるためには、教える側にも相応の能力や実績が求められます。
そして、その能力と実績が認められた人が専門学校に先生として招かれているのです。
専門学校の講師たちは、大学教員と違って研究者や学者ではありませんから、とにかく実務を中心に生徒に技術を伝授します。
「町内のお祭りで配るうちわのデザインを課題として課す」ことや、「学科全員で年に一度のイベントの舞台装置の設営を一手に引き受ける」ということもあります。
学生のうちに授業の一環でプロと一緒に仕事をして感覚を養うことができるのは、専門学校ならではの魅力です。
講師と生徒との距離が近い
専門学校では、一授業が100人を超えていて教官の顔も見えない大教室で講義を受けるなんてことはありません。
少なくとも専門学校はスキルを伝授するべき学校なのですから、教官からひとりひとりの顔が見えることが大前提なのです。
ですから講師と生徒との距離が近く、プロである講師の技術を学びやすいという魅力があります。
フォローが万全
専門学校は生徒を放任するような教育はしません。
大学であれば自己責任で放任するようなことでも、専門学校はしっかりフォローします。
高校のようですが、専門学校をサボると学校から電話がかかってくるレベルです。
もちろん大学よりも就職支援は手厚いですし、就職先が決まるまでしっかり講師たちが面倒を見てくれます。
大学では、就職できない学生がいても基本的に積極的に関わることはありません。
就職までのフォローが万全だというのは、専門学校の大きな魅力です。
専門学校について知っておくべきこと
ブラックな専門学校もある
専門学校の中には就職率を上げるために必死なっている学校もあり、とにかく就職させてしまえば良いんだからと、生徒の意図しないところに就職させる話を聞くことがあります。
また、本当はあってはならないことですが、就職率を上げるために「実力不足の1年生を2年生に進級させない」という話も聞きます。
就職率は2年生の人数に対する就職人数で計算されますので、2年にしなければ良いのです。
「こいつは就職できそうに無いぞ」と思われたら留年させられるなど、かなり厳しい現状もあります。
もちろんその評価が適正なこともありますので、一概には言えませんが、オープンキャンパスなどで「就職率」などの数字だけを強調している専門学校には気をつけた方が良いでしょう。
大学よりも規則が厳しい
専門学校は細かい指導が大学に比べて多く、ときに学生と指導教官の間に摩擦が生まれることもあります。
私自身、先生に不満を漏らしている学生を何度も見ました。
大学なら見過ごされて放っておかれるようなことでも、就職準備のために授業を行っている専門学校では厳しく指導されることがあります。
専門学校は生徒たちを社会に送り出すために必要な教育をすることを目的にしていますので、
- 「朝のあいさつ」
- 「職員室に入る時の声の掛け方」
- 「先生や企業の方への敬語」
に至るまで、多くの指導項目があります。
専門分野で社会人デビューするために必要な実務教育をたった2年で修了するわけですから、多少は厳しくならざる負えないのは事実です。
なぜ専門学校は存在するのか
どの仕事にも実践的なスキルは必要不可欠ですが、昔は就職してから技術を教えてもらったり、師匠からスキルを盗んだりして一人前になっていました。
しかし、物流、事業展開、技術革新がスピードアップしたことで、就職後に丁寧に技術を教える余裕が少なくなってきたため、
「あらかじめ、ある程度の実践的な技術を身につけてから就職して来て欲しい」
というニーズが出て来ました。
そして、それに答える形で職業訓練校が増えていったのです。
今では情報系、介護系、保育系など専門学校には学科がさまざまありますが、私が知っている専門学校なんて、元を正せば「編み物教室」だったんです。
今では死語になりましたが「花嫁修業」のお稽古ごとのひとつとして考えられていて、「技芸学院」なんて名前がついていました。
時代が進につれて技術が急速に発展し、仕事がどんどん細分化されると同時に、求められる人材を育てるスピードも早くなっていきました。
業界によっては、もはや「就職してからじっくり初歩から技術を磨きましょう」なんてのんきなことを言っていられなくなりました。
そして「自社で教育する余裕が無いから、自分で勉強して技術を磨いてから就職してね」などという経済界の要望もあり、専門学校の需要がますます高まることになったのです。
不況によって大学志向の世の中へ
少し前の話ですが、世界全体で景気が悪くなる局面があり、多くの企業が若手社員の新規採用を減らした時期がありました。
そして、この時期に就職先に困った高校生たちの中には、専門学校よりも就職の際に役立つ「ハズ」だと考えて大学を目指すようになった学生たちもたくさんいました。
あまり褒められた話ではないのですが、新卒求人が少なくなったことで「学歴志向」が高まり、多くの高校生も学歴を取得するために「とりあえず大学に行く」という感覚が強くなったのです。
世の中、とにかく「大学」が増えていきました。
これは規制緩和の政策の一環で、より自由な発想の大学を可能にしたためです。
その結果どうなったかというと、短大や専門学校が「4年制大学」に早変わりしました。
大学志向に走った高校生の需要と学歴志向に敏感に反応した短大と専門学校の供給バランスが、なぜか絶妙に取れてしまったので、大学が量産され、どんどん専門学校は影を潜めていくことになったのです。
専門学校の巻き返し
では専門学校が淘汰されたかというと、そうではありませんでした。
大学でキャンパスライフを満喫している学生の姿がテレビで流れ、滑稽に思えるほど大学生が増え、ネコもしゃくしも大学生に成れるとなると、当然揺れ戻しの反応もあるものです。
しかも、大学4年間の学費もバカにはなりません。
国公立大学では4年間で200万円以上、私立大学では文系と理系の差が出て来て、国立大学の倍額くらいは覚悟しておかねばなりません。
「映像クリエイターに成りたい」「介護福祉士に成りたい」というときに、「わざわざ大学に行く必要があるのか?」と考えるのもムリはありません。
結局、こつこつ有能な地域人材を輩出する実績を積んで来た地元の専門学校が、滅びることはありませんでした。
その証拠に、あまり知られていませんが、数を数えてみると専門学校は大学の約4倍もあるのです。
学校数 | 進学者 | |
専門学校 | 2817校 | 約17万人 |
四年制大学 | 777校 | 約53万人 |
引用:文科省H29年度学校基本調査,引用②:数字で見る専修学校
専門学校に行く意味はある
専門学校に行く意味は確かにあります。
大学に行くよりも専門学校に行くほうが近道な業界もたくさん存在します。
また、すぐに就職するよりも専門学校に行った方がキャリアを築きやすい業界もあります。
専門学校に行くにしろ、行かないにしろ、大切なことは「自分が何を学べるか」です。
自分の目標を達成するために専門学校に対してメリットを感じるのであれば、恐れずに専門学校を選択肢に入れましょう。
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