AO入試と他の入試形式の大きな違いの一つが、自己PRの比重です。
AO入試は、「大学のアドミッション・ポリシーに自分がいかに適合しているか」をアピールするものです。
いわば、自分自身を商品として志望校に売り込んでいくことと言ってもよいでしょう。
しかし、手段やスタイルにこだわりすぎるあまり、本質を見失ったプレゼンテーションを行ってしまえば合格はおぼつきません。
大学入試で合格するためにはどのようにプレゼンテーションを行うべきか、一緒に考えていきましょう。
1.プレゼンテーションって何?
プレゼンテーションには、以下のように二つの辞書的な意味があります。
(1)広告代理店が広告主に対して計画・企画案などを提示・説明すること
(2)集会などで自分の意見や考えを発表すること
この定義から言えることは、プレゼンテーションは自分の考えや計画を相手に伝え、理解してもらい、納得を得ることが目的だということです。
- 自分が言いたいことだけを並べてもダメ。
- 相手を説得できなくてもダメ。
簡潔で分かりやすく説明しつつも、自分自身の思いを伝え相手を動かす。
それがプレゼンテーションで大事なことです。
しかし、これは言うのは簡単ですが、実行するのは難しいです。
自分が言いたいこと、伝えたいことを限られた時間内で説明するためには、工夫と準備、そして練習が必要です。
2.プレゼンテーションの準備
プレゼンテーションで一番大事なのは目的です。
- 「相手に何を伝えたいのか」
- 「伝えたいことをしっかり伝えるためには、何を用意しなければならないのか」
ゴール地点を明確に意識してプレゼンテーションの流れを考える必要があります。
良い文章を表す言葉として「簡にして要を得る」というものがあります。
簡単(短く)で、かつ要点が分かりやすい(シンプルに)プレゼンテーションを目指しましょう。
さて、このようなテーマが出題されたら、どのようにプレゼンテーションの構成を組み立てるべきでしょうか。
テーマ:「〇〇大学の△△学部で学びたいこと、活動したいこと」
まずは、着地点である「大学でやりたいこと」の内容を考えましょう。
これは、アドミッション・ポリシーに照らしあわせて、志望動機を自分で組み立てましょう。
次に、その志望動機に至った理由を考えます。
これは、実体験であればあるほど望ましいです。
「□□という経験をきっかけに、私は△△と考えるようになり、〇〇大学で▽▽を学びたいと思ったのです。」
と続けるのが説明しやすい順序でしょう。
その次に、入学後にしたいこと・抱負(展望)を列挙します。
パワーポイント資料であれ、紙の資料であれ、分かりやすいように箇条書きで並べていきましょう。
内容を述べた後は、いよいよ自分の思いをぶつける番です。
多少言葉は間違えてもよいので、相手に想いを伝えましょう。
資料の最後に「まとめ」をつけ、それを読み上げてから、以上の理由でこの大学を志望したとまとめるとよいでしょう。
- 大学ではやりたいことなら志望動機とほぼ同じ。
- アドミッション・ポリシーと照合は絶対。
- 志望動機の理由
- きっかけは具体的な体験だと説得力アップ
- 思いをぶつけるときは思い切り。棒読みにならないよう気持ちを乗せて
- 最後にまとめをつけるとなおよし。
3.質疑応答
自分のプレゼンテーションが終わると、プレゼンテーションの内容に対して聞き手である面接官が質問をぶつけてきます。
それに対して、いかに論理的に返すことができるか。
これも重要な採点ポイントです。
資料やパワーポイントの完成度がいかに高くても、質疑応答がうまくいかなければそれらは輝きません。
プレゼンテーションを作る段階で、
- 「ここツッコまれそうだな」
- 「こういう質問をされたらどう答えようか」
と何度もシミユレーションをして、しっかり質疑応答に対応できるように準備しましょう。
4.実例
AO入試ではありませんが、国公立大学の後期二次試験の面接でプレゼン型で挑んだ学生の例をお話しします。
彼は、長い間第一志望校が模試でD判定でした。
そして一般的な推薦面接の対策では勝算が低いと判断したため、要項で指定されていませんでしたが「勝手に」資料を作成して面接官にプレゼンするやり方を取りました。
彼が実際に行ったのは「建築学科に入学したら作ってみたい理想の家」のプレゼンです。
パワーポイントも持ち込めず、手の込んだ資料を作成することもできなかったので、彼には自分が作りたい理想の家を書いたスライドというか、イラストを書かせました。
お世辞にも上手なイラストではありませんでしたが、緑に囲まれ、環境にやさしい家をコンセプトにしたものでした。
出されたとき、面接官はとても驚いていたそうですが、その後の彼の説明を熱心に聞いてくれ、何をしたいのかを面接官のほうから食い入るように質問してくれたとのことでした。
そして、その試験を受けたときの様子を聞いた瞬間、私は「勝った」と思いました。
大学の先生たちが大学受験の面接に対する態度は、企業面接の面接官よりもはるかに正直です。
興味があるものに対しては、身を乗り出して聞いてきます。
今思えば、前期試験不合格の後で急造したプレゼンですから、お世辞にも上手なものではなかったでしょう。
しかし、シンプルかつ情熱を持った彼の語りは教授たちを動かしたようです。
結果はもちろん合格でした。
5.プレゼンテーションで大事なことは何か
- 箇条書きで書く
- わかりやすく書く
- 質疑応答はこうするべきだ
といったスキルももちろん大事なのですが、肝心なのは骨子です。
「何のために、誰にプレゼンするのか」そして、そのプレゼンにどうやったら想いを乗せることができるのか。
論理に裏打ちされた情熱を示すことこそ、一番大事なものだと私は思います。