大学進学を考えるとき、自宅から通うことができる大学なのか、それとも一人暮らしが必要となるのかは、しばしば親子の間で争いの種となります。
そして、保護者の方は、
一人暮らしをしたい
という子供の希望によく難色を示します。
ですが、一人暮らしを親に反対されても簡単にくじける必要は無いのです。
どうして保護者の方は、子供の一人暮らしに反対することが多いのでしょうか?
また、一人暮らしを反対されたときには、どのように親を説得すればいいのでしょうか?
今回は、一人暮らしを親に反対されている皆さんにアドバイスします。
元予備校講師の営業マンです。
高校の非常勤講師、学習塾・予備校の講師の経験を活かして大学受験に関する記事を執筆しています。
保護者の方が一人暮らしに反対する理由
保護者の方が、皆さんの一人暮らしに反対する理由は大きく分けて2つあります。
それぞれについて分析してみましょう。
経済的な理由
大学入試は、皆さんにとって一大イベントであると同時に、保護者の方にとっても大きな決断を伴う事柄です。
保護者の方が一様に苦労されるのは、経済面でのことでしょう。
大学生活にかかる費用は、大きく分けて二つあります。
【1】入学までにかかる費用
一つ目は、入学までにかかる費用です。
入学する大学に納入する初年度納付金、パソコンや教科書などの教材費など、基本的なものだけでも相当な金額です。
国公立大学に限っても、70万円弱必要です。
私立大学の場合、設備費・実習費などが国公立大学よりも多く計上されることが多いので、さらに割高です。
【2】生活費
二つ目は生活費です。
「平成28年度学生生活調査(日本学生支援機構)」によると、自宅生の生活費は毎月34,000円であるのに対し、自宅外・下宿生は91,000円に及びます。
下宿生よりも家賃が高くなる一人暮らしの場合は、実家暮らしの学生に比べて費用が大きくかさむのです。
高度経済成長期のように、給料が右肩上がりで上がる時代ではない以上、安易に出費を増やすわけにはいきません。
「どの大学でもいいのなら、地元の大学に自宅から通ってほしい」と保護者の方が考えるのは当然のことです。
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(2)安全面・生活面での心配
一人暮らし、特に女子学生にとっての一人暮らしは、安全面での配慮が欠かせません。
見知らぬ土地で、顔も知らない隣人と接する環境での一人暮らしは、保護者の方からすれば心配になって当然です。
また、一人暮らしになると生活が「だらしなく」なりがちです。
朝起きる時間、食事の時間、睡眠時間などがルーズになることも、保護者の方からすれば心配の種なのです。
そして、生活習慣の乱れなどからくる健康面にも不安があります。
子供が病気になった時にどうしよう
すぐに駆け付けられないことを心配する保護者の方も少なからずいらっしゃいます。
これらの不安が積み重なり、一人暮らしを反対されている可能性を考えてください。
一人暮らしは自立への第一歩
私は予備校講師時代に、保護者の方や学生さんから一人暮らしの件を相談されたとき、
「可能なら一人暮らしをさせたほうがいいです」とアドバイスしていました。
なぜかと言いますと、一人暮らしをすることで学生の自立の練習になると考えるからです。
一人暮らしをすると、すべてのことを自分で判断して行動しなければなりません。
自分の生活スケジュール管理や生活費のやりくり、食事や健康管理の在り方など、今まで保護者の方に面倒を見てもらっていたことをすべて自分で行う必要があります。
そうすると、今まで出来なかったことも、出来るようになることが多いのです。
私自身、長らく実家暮らしをしていましたが、転職して県外就職をしたときに一人暮らしを始めました。
料理・選択など何一つできなかったのですが、一人暮らしになると自然とできるようになります。
なぜなら、他にやってくれる人がいないからです。
人間、やらざるを得ない状況に追い込まれると、自然とやるためのスキルが身につきます。
ですから、私は大学生や専門学校生は一人暮らしを経験するべきだと思うのです。
ただし、女性は安全面での配慮も必要です。
保護者の方と協力しながら、一人でも安全に過ごしやすい街や物件を探すことをお勧めします。
どうやって、保護者と交渉すればいい?
保護者の方が一人暮らしに反対している場合、冷静に、かつ、粘り強く交渉しなければなりません。
その時、ただ「一人暮らしをしたい!」と自分の希望を述べるだけでは、埒があきません。
保護者の方が懸念している心配を、一つ一つ払拭していきましょう。
経済面での不安
経済面での不安については、大学が実施する奨学金・学費減免などを徹底的に活用しましょう。
特に、入学する前に減免を受けることができるか分かる「特待生」入試は、大いに活用しましょう。
また、具体的に、予想される家賃や生活費を細かく計算し、
を調べましょう。
親にとっても、具体的にいくらかかるのかの目安があれば、一人暮らしの許可を出すか検討しやすくなります。
親を説得できるように、できるだけ細かくしっかり調べて説明しましょう。
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住む場所について
住む場所については、寮や下宿を選択することで費用面・食事面・生活面での、保護者の方の不安を軽減することができます。
アパートやマンションで一人暮らしをするのもいいですが、設備が良く、なおかつ安い学生寮はたくさんあります。
安い物件を見つけることができれば、浮いた家賃分は生活費に回せますし、また、アルバイトで稼ぐお金が減って自由な時間も増えます。
家賃はとても大きな固定費ですから、1000円単位まで自分に合った物件を探しましょう。
※女性の場合は、女性専用の下宿・物件などを選ぶのがおすすめです。特に、オートロック付きの物件は親にとっても安心です。
生活リズム・生活習慣
生活習慣については、実家にいるときから改善することが効果的です。
志望校を決定するのは秋から初冬です。
その前、夏から秋にかけて生活リズムを整え自分の行動を律していきましょう。
正直、大学生は簡単に生活リズムがズレます。
社会人になってから一人暮らしをする方にも同じことが言えるのですが、意識して生活習慣を整えましょう。
保護者の方は、自分の子供が心配で反対しているのであって、やみくもに何でも反対というわけではないのは重要な点です。
保護者の心配や懸念事項を、ひとつひとつ解きほぐすことによって、次第に皆さん方の希望にも耳を傾けてくれるでしょう。
保護者を説得できるよう、しっかりと情報を集め、計画を立てて、納得がいくプレゼンが出来るように準備しましょう。
さいごに
大学進学に伴う一人暮らしは、保護者の方からすれば心配事がたくさんです。
そのことを察することは、とても大事なことです。
しかし、それ以上に大事なのは、受験生である皆さん方が本当に「行きたい大学」なのかということです。
はじめの方で述べたように、大学に4年間通わせるというのは家庭にとってかなり大きな負担です。
一度に支払うことが難しいときは、教育ローンなどを組まなければなりません。
保護者の方にとっても、子供を大学に行かせるというのは一大決心なのです。
ところが、一人暮らしをしたいという気持ちが先走ってしまい、
自宅から出られるならどの大学でもいい
という考えを持ってしまった学生にも過去に出会いました。
それは、本末転倒ではないかと思うのです。
一人暮らしは、とてもたくさんの貴重な経験を与えてくれ、社会人になる前に自分ですべてをまかなう経験はとても重要なことです。
しかし、それはあくまでも学生生活の副産物です。
一番の目的である「大学でしっかり勉強する」ということがおろそかになってしまうなら、たとえ自宅からの通学であっても、保護者の方は進学に反対するでしょう。
進学するときは、4年間の費用に見合うだけの勉強や経験を積むことを忘れてはならないと思います。